それは、何も起こっていないのに、なぜだか感動している不思議な時間。
今日は会社帰りに映画を見てきました。場所は渋谷シネマアンジェリカ。道玄坂の南側裏手にあるミニシアターです。映画のタイトルは『マイマイ新子と千年の魔法』。
まず、それって何って人のためにこれまでの経緯を(笑)。
これ、公開自体は昨年の11月なんですが、あまりの興行成績の悪さに2、3週間で関東から上映館が絶滅したいわくつきの映画なんです。
製作はサマーウォーズと同じマッドハウスだというのに、宣伝が明らかに足りなかったんでしょう。自分も知ったのは12月に入ってからの収束後、GIGAZINEの記事からでした。
絵柄と内容に興味を惹かれたものの、その時点での上映館はなし。しかしGIGAZINEの記事の内容は、12月に阿佐ヶ谷で一週間限定ながらレイトショーで復活するというもの。
これは嬉しいと休日にはるばる阿佐ヶ谷まで赴いたんですが。その頃にはクチコミが拡がり連日昼過ぎにはチケット売り切れの超満員。昼下がりに到着じゃ当然入れるはずもなくスゴスゴと帰りましたよまったく。
その後一旦忘れていたんですが、気づいたらカルトな人気で上映館は限られながらも細く長く公開が続いていたようで。初期動員数からは考えられない奇跡のロングランです。
その『マイマイ新子』が今度は勤務先の渋谷で上映。しかも職場から片道5分の超近所。これはもはや運命だろうと、レイトの上映スケジュールになるのを待って訪れたわけです。
さて、ようやく話を始めましょう(笑)。
とはいえ、感想を書くのにとても困る作品でした。本編通して非常に丁寧に昭和の田舎が描写され、そこに暮らす子どもたちの視点から見た空想世界が鮮やかに描かれる、ただそれだけ。
途中多少の事件も起こりますが、子どもたちが何かをしたからと言って状況が変わるわけでもないし、別段問題が解決を迎えるわけでもない。でも明らかに感動してるという。
ウェブ上で何人もの人が書いている「理由がわからないのに感動した」という感想。自分もしっかり体験するとは思いませんでした。
子どもたちが見ている景色、その特殊な世界の表現があまりに鮮やかで綺麗。そこに無意識に自分の子供時代を重ねているからでしょうか。無条件にノスタルジー。多分これは大人のための子ども映画です。
見ているうちに自分がその世界に一緒にいるような気になって、新子や仲間たちと一緒に笑ったり悲しんだり怒ったり。感情移入はどんな作品でもありますが、この映画はそれがかなり強い。とにかくこの景色の中に一秒でも長く居たい、そんな気分にさせる作品でした。
ただやっぱり単純な盛り上がりや派手さには欠けるので、「面白かったか?」と聞かれると首を捻ります。「良かったか?」という質問なら間違いなく頷けるんですが。うーん、書いてる自分もわけわからん。
帰りながら反芻すると、自分の幼い頃の景色がちょっとだけ蘇ります。
走る車の中から窓を流れていく景色に空想の飛行機や鳥を飛ばして競争したり、洞窟の暗がりの奥に棲む空想の怪物と決闘したり。動物型の消しゴムをペット替わりに連れ回したり、空き地の茂みをジャングルに見立てて日が暮れるまで探検したり。空を見上げれば空想の羽根で宙返り、海を見れば空想の島でイルカと友達。
今じゃもうそんな空想に本気になれないですから、当時の自分がまるで他人に思えますね。こういう映画が作れるクリエイターな人の眼は、あの頃の眼と同じ色をしているんでしょうか。
「明日もあそぼうや」
これからの子どもたちのためにも、遊ぶことを忘れちゃいけない。みんなで笑ってなきゃいけない。いつまでも遊び続けることができればいいな。
ちなみにこの『マイマイ新子』ですが、関東圏での上映はここシネマ・アンジェリカが最後になる可能性が高いそうです。上映期間は明後日金曜日まで。最終日は監督の舞台挨拶もあるそうです。夜の上映時間は19:30から。
DVDリリースされるかも分からないようなマイナー作品なので、興味のある人で足を運べるのであればぜひに鑑賞をおすすめしますよ。・・・少々手遅れ気味なエントリーですが(笑)
(追加情報)4/17〜4/30 吉祥寺バウスシアターでも公開が決定したそうです。まだまだ機会はありそうですね。
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「マイマイ新子と千年の魔法」公式サイト