突然ですが、実家に戻った際に珍しく一冊本を読んだので感想などを。
蒲原二郎のデビュー作になる伝奇コメディで、ボイルドエッグズ新人賞の第10回受賞作品です。ボイルドエッグズ新人賞は万城目学を輩出した賞だと言うと知る人にはピンとくるらしいのですが、残念ながら学のない自分が読んだことなどあるはずもなく。
そんな萌えしか興味の無いような自分が、何故にこんないかにも怪しげな表紙の本を手にとったのか。
実は、この作者の蒲原二郎氏が自分の中学時代の同級生だったりしたんです。地元に戻った際に当時の友人から知らされてビックリ。まさか知人が作家デビューするとは思わなんだ。ついでに作者本人と顔を合わせる機会もあり、直接感想など伝えさせていただいたのですが、実際の現場のこぼれ話などを聞けてちょっと貴重な体験になりました。何が守秘事項かわからないのでここにはあまり書きませんがネ。
そんなわけで知人の本だし、レビューも遠慮無く(笑)。
いい意味でも悪い意味でも軽い話でした。ヒトコトで表現すると、萌えを抜いて裏社会の黒さを加えたGS美神。バカバカしい設定と勢いのある文体で、構えることなく気楽に読み進められました。
権力とカネと魑魅魍魎。作者の趣味をとにかく混ぜてみたらカオスが気持ちイイとこまで吹っ切れましたって印象です。深いストーリーのようなモノはほとんど無いに等しいけど、とにかく文章のテンポが良いので特に後半は頑張らなくても一気に読めるんじゃないでしょうか。
読後感は小説というよりギャグ漫画のそれ。一部のラノベみたいな周りくどい言い回しもなければ、面倒な色恋沙汰も皆無。あー、そうか、落語や講談を聞いてるような感覚なんだコレ。あるいはドリフの漫才。突拍子もないけど安心感があるってあたりが似てる。作者本人が独特の喋り方をする人で、そのトーンで脳内再現されちゃうんでなおさらです。
反面物語の起承転結自体には面白みはあまり感じられません。全編「世の中金と権力が全てや」と言わんばかりにねじ伏せられるある意味下品な成金展開なので、それをジョークと笑い飛ばせるだけの余裕が無いと冷めちゃうかも。
作者と同じかそれより上の世代のサラリーマンなら、あの頃の娯楽作品を懐かしく思いながら笑える、まあ佳作なのかな。インパクトだけは装丁も内容も一流なので、運悪く目に止まってしまったら手にとってみてあげてください。
かわいくないから自分は買わないけどナっ(爆)。
本人もあとがきで「文学部病」と揶揄してましたが、文学部にいた人間なら一度は自分で本を書きたくなるというのは正しい指摘だと思います。自分もかつては文学部に所属してた人間だからでしょうか、こうやってブログを書くのもノってくると非常に気持ちがいいものです。
ただ、哀しいかな物語を紡ぐだけの知識の蓄えがありません。いずれは自分も・・・と野心を抱いたところで、TRPGのシナリオもまともに作れない貧困な脳じゃ一縷の望みも五里霧中。かといって名作を片端から読み耽るような気力もなく、これが凡人と秀才の違いかと感得するに至るわけで。
うじゃ。